インプラント経験者が伝えるインプラントの注意点

近年、インプラント治療の技術が急速に発展したことから、インプラントは失った歯の治療法のひとつとして当たり前になりつつあります。
しかし、
「インプラントは他の治療法とどう違うの?」
「どんな歯医者がいいの?」
「手術ってどんなことをするの?」
と疑問や不安に思うことがたくさんあるのではないでしょうか。
奥歯が永久歯に生え変わらなかった私は、20代でインプラント治療を受けました。
そして、現在もメンテナンスのための通院をしています。
そんな私の体験談を元に、
治療前の下準備から治療後のメンテンスまで、インプラント生活の詳細を紹介していきます。
この記事を読み終えたときには、インプラント治療を受ける生活イメージが湧き、自分にインプラントが向いているのかを知ることができますよ。
1.私がインプラントを選択した理由と決め手
成人しても右上奥歯が永久歯に生え変わらず、乳歯のままだった私。
乳歯は脆いため、
詰め物で歯を被せて保護し、それが取れては詰め直すという治療を20年以上続けていました。
しかし、ついに根元から抜けてしまったため、
20代という若さでインプラント治療をすることに。
失った歯の治療方法は、インプラント以外では
②入れ歯
③歯の移植(親知らずが生えている人はその親知らずを抜歯して移植する方法)
があることを歯科医より説明されました。
当時まだ20代だった私は、この先ずっと入れ歯で生活することは考えにくく、また、私には親知らずが生えていなかったため、ブリッジとインプラントの2択となりました。
ブリッジとインプラントに特化したいくつかの歯科医院を調べ、実際にカウンセリングを受けてわかったそれぞれのメリット・デメリットを記します。
- 治療期間が短い(2週間~1ヶ月)
- 治療が容易なため、比較的どこの歯科でも治療が可能
- 治療費は~25万とインプラントより安価(銀歯であれば保険が効く)
- セラミックであれば見た目も自然
- 自分の歯との違和感は少なく、硬いものも噛める
- 治療対象部位の両サイドの歯を削らなければならない
- 両サイドの歯に負荷がかかり、10年程度で抜歯となる可能性がある
- 橋の部分に食べカスが詰まりやすい
- 自分の歯を削らなくてよい
- 見た目は自分の歯とほとんど変わらず自然
- 噛み合わせは自分の歯と同じ感覚で、硬いものも噛める
- 治療期間が長期(1年程度)
- 外科手術が必須であるため、歯科医の技術不足によって失敗もあり得る
- 麻酔や内服薬が必要であるため、妊婦や授乳中の人、持病がある人は治療できない可能性がある
- 自費診療となるため、治療費が35~50万と高額
- まだ新しい治療法であり、耐久性、副作用が未知である
私が最後にカウンセリングを受けに行ったところは、インプラント治療専門の歯科医院でした。
そこで、CT画像から「歯ぎしりによって顎の骨が削られている」ことを指摘されました。
顎の骨が薄いと、インプラントを埋入する際に神経や血管を傷つける恐れがあるため、出来ないこともあるとのこと。
私は、幸いにも「ぎりぎりインプラントにできる」と診断されました。
ちなみに、ブリッジにした場合も歯ぎしりによって歯根が削られたり、橋部分の緩みから10年持たず早く破損してしまったりする可能性があるそうです。
耐久性が劣るのにブリッジで両側の2本の歯を削る代償は大きいと判断し、インプラントを選択しました。
また、
・清潔な手術室
・CT、簡易的な入院施設等の設備が充実していること
から安全性を感じ、この歯科医院での治療を決めました。
2.失敗しない歯医者選び
インプラント治療を受けるにあたって、歯医者選びは一番重要です。
実際に足を運んでカウンセリングを受けて歯科医院を決めることが、インプラント治療成功のカギとなります。
カウンセリングを受けに行った際には、
院内が清潔であるかどうかや、埋入後の補償、メンテナンスについても確認すると尚、安心です。
それらを踏まえて、どんな歯科を選択してカウンセリングに行ったらいいのか、3つのポイントを紹介します。
この3つのポイントがHPや広告に載っている歯科医院をお勧めします。
①インプラント専門医の資格を持った歯科医がいる
インプラントの資格を持つ専門医のいない歯科医院でもインプラントを謳っていることがありますが、やはり資格を有する専門医のいる歯科医院のほうが安心です。
専門医の資格は1つの指標として、HP等で事前に確認しておきましょう。
インプラントに関しての資格は様々ありますが、
日本における最大の学会である「日本口腔インプラント学会」の資格は特に信頼できます。
私もこの学会の専門医がいる歯科医院にて治療を受けました。
②インプラント症例数が多い
定期的に研修等に参加していても、実際の症例数が少ない場合は手術の腕を磨けていない頭でっかちな歯科医の可能性があります。
HP上で多くの症例写真が挙げられていると、それだけ様々なケースに対応できる歯科だということがわかります。
③CT設備がある
歯科医院にはレントゲン設備はあるところが多いですが、CTのほうが骨の厚さや歯の生え方など、より細部の口腔内撮影が可能です。
安全に手術を行うにはCT画像診断が必須であるため、CT撮影機がある歯科医院を選びましょう。
3.インプラント経験談を元にした治療の流れやメンテナンスについて
3-1.治療の流れ
私の場合、手術前に元の歯根が残っていないか、感染症がないか、CTにて顎骨の厚みなどの細かな検査を行うために1度通院しただけで、次の通院日には一次手術となりました。
私は右上奥歯を治療したのですが、下顎よりも上顎のほうがインプラントと顎骨が結合するのに時間がかかります。
そのため、インプラント体を埋入した一次手術後、半年あけてから人工歯を装着する二次手術を行いました。
治療中の最大の山場は一次手術であり、それさえ終わってしまえばあとは普通の歯科通いと変わりません。
手術自体は30分程度で終わりますが、その後3日くらいは痛みや腫れがあること、また、1週間後の抜糸など術後にも通院を要するため、予定に余裕を持たせることをお勧めします。
【一次手術の流れ】
歯茎を強く押される感覚がありますが、痛みは感じません。
とんかちのようなもので「ドンッドンッ」と叩いて埋めていくのですが、頭のてっぺんまでドンッと響き、頭全体を叩かれている感覚がします。
この時間が一番辛い時間かもしれません。
響いて痛かったら遠慮なく手を挙げて、休憩を挟んでもらいながら頑張って挑みましょう。
【一次手術後から二次手術まで】
術後、麻酔が切れたら食事や飲水制限はありませんが、私は手術当日、痛みと腫れで食べることができませんでした。
痛み止めの内服薬やうがい薬を処方してもらっていたので、それらを服用すると徐々に痛みが消え、翌日には手術部位の逆側で噛めば食事をすることができました。
一次手術後、経過観察のために月1回のペースで通院し、二次手術に備えます。
その間、インプラント体が骨と結合しておらず不安定であるため、硬いものやガムなどのくっつきやすいものは噛まないこと、強い力が加わることがないよう注意が必要です。
【二次手術から治療終了まで】
やや不自由な半年を過ごし、二次手術を迎えました。
歯茎を切開する必要がある場合は麻酔を使用する人もいるようですが、私は麻酔を使用せず人工歯を装着できました。
インプラントを保護していたキャップを取り、ネジを回すように人工歯を装着して終了です。
最後に、私の場合は歯ぎしりを予防するためのマウスピース作成を行いました。
歯型を取った1ヶ月後にプラスチック製のマウスピースが完成し、全ての治療が終わりました。
初めてカウンセリングに行ってから10ヶ月が経っていました。
3-2. メンテナンスについて
埋入後はメンテナンスをしないと、インプラントの耐性低下を招いたり補償対象外となったりする可能性があるため、歯科医の指示に従ってしっかりとメンテナンスをすることが大切です。
私は、埋入後10年間は半年に1度の頻度でメンテナンス通院をしています。
毎回、1万円の診察代がかかり、内訳はレントゲン撮影、診察、クリーニングの3点。
特に違和感や変わったことがなければ虫歯がないか確認する程度の診察で、クリーニングがメインです。
歯科衛生士さんが丁寧に磨き上げてくれます。
毎日の管理としては、念入りに歯磨きをすること以外には特別ありません。
インプラント周囲炎を予防することが重要となりますので、歯間ブラシを使用して磨き残しを無くしたり、歯茎の色や歯肉炎の有無をチェックする習慣をつけたりすると尚良いです。
私の場合、歯ぎしり予防に装着するように言われているマウスピースの管理も必要です。
毎晩寝る前にマウスピースを装着し、朝起きたら入れ歯洗浄剤等で漬け置き洗浄します。
慣れるまでは違和感があり眠りづらさもありましたが、今では装着していないと眠れなくなるほど。
初めのうちは管理が面倒ですが、毎日のことなのでルーチン化すれば苦ではありません。
3-3.治療後のメリット
メンテナンス代の出費はやや痛手ですが、治療後はそれ以上にメリットを感じています。
まず、見た目!
自分の歯の色に合わせて人工歯を作っているため、天然の歯と変わりありません。
別の歯科に歯科検診に行った際も歯科医ですら気づかないほどとても自然です。
噛み合せも自分の歯と同様です。
前は硬いものは治療対象の逆側で噛むことを意識し、かばって食べていましたが、インプラント埋入後は硬いものも問題なく噛むことができ、グラつきも全くありません。
口の中全体で食べ物を味わえ、味をより敏感に感じることに感動しました。
また、マウスピースのおかげで歯ぎしりもなくなったようで、家族から指摘されることもなくなりました。
インプラント自体もトラブルなく経過しています。
まとめ
私はインプラント治療を受けて、治療前は想像していなかったメリットを感じています。
- 味を敏感に感じる。
- 歯ぎしりの改善。
- 歯科医も気づかないほどの自然な見た目。
- 硬いものも全く気にせず噛める。
ただし、治療を受けるにあたって、以下の注意点も知っておく必要があります。
- 顎骨が薄いとインプラント治療が受けられない。もしくは骨形成術が必要。
- 一次手術時は痛みと恐怖を感じる。術後1週間は痛みと腫れが続く。
- 一次手術後から二次手術までの期間は力んだりしないよう注意が必要。
- 治療代にプラスしてメンテナンス費用も嵩む。
インプラント生活が少しイメージできたでしょうか?
まずカウンセリングに足を運び、
自分に合った歯科を見つけることが大切です。
治療後の生活がより良いものになるよう、後悔のない治療を選択してくださいね。
[インプラントを受けた動機や決め手について]
[口臭、滑舌の変化は?]
術後2週間ほどはインプラント部分が気になって、舌を噛んだり喋りづらかったりすることはありましたが、すぐに慣れました。
[手術中、術後のトラブルについて]
現在インプラントを埋入して3年弱経ちますが、1度インプラント周辺の痛みと知覚過敏があり、インプラントを外して診てもらったことがあります。
歯肉炎とのことでインプラントには問題なく、自然治癒しました。
[手術を受ける前の説明と手術を受け始めた際の違い]
それ以外の診察や2回目の手術は毎回、違う医師で口の中だけパッと見て終わりなので、顔さえもわかりません。
最初に説明してくれた医師への信頼感があっただけに手術だけしてその後は、全くノータッチというのは少し不安を感じました。
それだけ何の問題もなく順調であるということ、と他の医師より言われましたが……。
[調べた内容と実際の違いについておしえてください]
しかし、手術後の対応が歯科によって全く違うと思います。
私の通う歯科では、10年間半年に1度の通院は必ずするようにと説明されていますが、手術後は全く通院の必要はない歯科もあります。
また、毎日マウスピースを装着することは、手術前に調べたネット等の情報には載っていなかったため想像していませんでした。
[メンテナンス・日々のお手入れについて]
日々のお手入れとして歯磨きは念入りに行い、余裕があるときは歯間ブラシを使って清潔を保つように心がけています。
インプラント自体の管理は自分の歯と同様ですが、とにかくインプラント周囲炎にならないよう、予防に努めています。
術後、1番生活習慣が変わった点が、歯ぎしりからインプラントを保護するために作ったマウスピースの管理でした。
私が作ってもらったマウスピースはプラスチックであるため、ブラシで擦ると傷ついてしまいます。
そのため、水で優しく洗い、使用していないときは入れ歯洗浄剤に浸けておきます。
装着場面は、入眠中以外、食事の時でもインプラントに過度の負担がかかりそうな時はいつしても良いとのこと。
私は、就寝時のみ使用しています。
[費用について]
歯科によって使っているインプラントメーカーが違うため、費用の差が出てくるのです。
カウンセリングの際に、費用の内訳を確認しておくと安心です。
また、メンテナンスや補償内容によって術後も費用が嵩みます。
私の場合は、インプラント代45万円にプラスして術後のメンテナンス費を合わせると70万以上かかっています。
高額ではありますが、この先長い人生を考えたらそれ相応の価値はあると思い決断しました。
結果、インプラントにしてよかったと思っています。
医療費控除対象なので、申請を忘れずにしましょう。
[インプラントを受けるべきか悩んでいる方へ]
不安や疑問に思っていることは、どんな些細なことでも歯医者さんにしっかりと伝えると良いですよ。
カウンセリングの際にスムーズに聞けるよう、メモしておくことをお勧めします。
そうすることで、自分が納得できる説明をしてくれる歯科医と出会い、自分にあったインプラントの治療法を提案してくれるはずです。
私の場合、治療中は痛みなど辛い時もありましたが、治療後は悩んでいたことが嘘のように快適な生活が送れています。
安心・安全である歯科で手術を受けることが条件ですが、悩んでいる方は、歯科医と相談しながら思い切ってインプラント治療を検討してみてはいかがでしょうか。