インプラントについて正しく知ると不安がなくなる!現役歯科医師が語るインプラントのすべて

歯を失ったときに、治療法のひとつとして候補に挙がる「インプラント」。
インプラント治療とは、人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、歯を補う治療法のことですが、外科手術であり、また専門性の高い分野であるため「興味はあるものの迷っている」という人が多いのではないでしょうか。
この記事では、歯科医師として、また実際にインプラント治療を受けた身として、インプラントの基礎知識や病院の選び方、実際の治療の流れについて説明し、インプラントを受けようか悩んでいる人へ伝えたいことを書いています。
不安は、インプラント治療について正しく理解することでなくなります。
この記事を読み終えた頃には、
インプラントに対する様々な不安が解消されているはず。
ぜひ参考にしてくださいね。
1.歯を失った時の治療法と著者がインプラントを選んだ理由
1-1.インプラント治療とその他の治療法について[メリット&デメリット]
インプラント体は、歯根部(インプラント体)と被せ物(上部構造)と、それをつなぐ支台部(アバットメント)で構成されています。
1回の手術によってインプラント体とアバットメントを埋める「1回法」と、一度インプラント体を埋めたあと縫合して歯肉に埋めて、その後再度手術をしてアバットメントを装着する「2回法」があります。
- 自分の歯と同じように噛める
- 左右の歯を傷つけることがない
- 見た目が自分の天然歯と同じ
- 自費診療なので高額
- 治療完了まで1~3ヶ月かかる
- 外科手術であるため心理的抵抗が大きい
また、その他の治療法として「ブリッジ」と「入れ歯」があります。
「ブリッジ」とは、歯を失ってしまった部分の左右の歯を削って被せ物を入れ、それを橋のように繋ぐ治療のことです。
- 固定式なので自分の歯と同じように噛める
- 保険が効く
- 治療期間が短い
- 左右の歯を削らなくてはいけない
- 保険診療の場合は銀歯になる
「入れ歯」とは、失った歯のかわりにつける取り外し式の機器のことで、残っている歯に金属のバネを欠けて固定する部分入れ歯や、全体の歯茎を覆うようにした総入れ歯があります。
- 左右の歯を傷つける必要がない
- 治療期間が短い
- 取り外し式なので面倒
- インプラントやブリッジに比べると噛み心地が劣る
1-2.著者がインプラントを選んだ理由
著者がインプラントを選んだ理由は、他の健康な歯を削りたくなかったからです。
私は小学生の頃に右上の前歯を割ってしまい、その時に歯の神経を取る治療をして差し歯にしました。
治療後20年ほどは問題なく使えていたのですが、30代の頃に差し歯が取れて、さらに歯の根が割れてしまっていたため抜歯となりました。
歯科治療において最も大事なことは、自分の歯を長く残すこと。
そのために、一番避けなければいけないことは、健康な歯を削ることです。
ブリッジで両側の歯を削った場合は、次のようなことが起こります。
- 歯を削ることで痛みが出て、歯の神経を取る治療が必要になる
- 経年的にブリッジを接着しているセメントが劣化し、発生した隙間から虫歯になる
歯は削れば削るほど寿命が短くなってしまうため、できるだけ削らないほうが良いです。
部分入れ歯は歯を削る必要がないので良いのですが、金属のバネによる見た目や、固定されているわけでないためしっかり噛めないことから選択外にしました。
一方、インプラントは両側の健康な歯を削る必要がないため、歯の寿命が短くなることはありません。
また、入れ歯とは違い、骨にしっかりと固定されているため、自分の歯と同じように噛むことができます。
しっかり噛めて健康な歯を傷つけないという理由から、著者はインプラントを選びました。
2.病院選びの前に持っておくべき知識と治療の流れ
2-1.持っておくべき知識について
歯科医院を探す前に、インプラントの基礎知識や治療の大まかな流れ、リスクについては一通り知っておきましょう。
なぜなら、
病院での相談時間を基礎知識の説明で消費してしまってはもったいないからです。
基礎知識はインターネットで調べてわかる範囲のもので構いませんが、より信憑性の高い情報を得るために、インプラントメーカーのホームページを見ることをお勧めします。
インプラントのメーカーはいくつかありますが、「ストローマン」と「ノーベルバイオケア」が国内で用いられることが多いです。
また、起こり得るリスクについてですが、場合によっては、手術後の腫れや痛み、血管の損傷による出血や神経麻痺が出ることもあります。
手術後の腫れや痛みに関しては、インプラントの本数にもよりますが、多くの場合発生します。
しかし、多くは親知らずの抜歯に比べると軽度で収まります。
血管の損傷による出血や神経麻痺に関しては、事前のCT検査などで避けることができるため、基本的には発生しません。
なお、インプラント体自体は体内へのアレルギー反応が出ないチタンを使っているため、アレルギーリスクがありません。
内容が専門的であるため、調べていくうちにわからないことも出てくるかと思います。
その際は、相談時間を活用して医師に直接質問をしてみてください。
相談をスムーズに進めるために、不安に思ったことや疑問点が出てきたら、その都度メモしておくと良いですよ。
治療する立場からしても、患者さんが不安を抱えたまま治療を行うことは避けたいので、質問は歓迎しています。
2-2.治療の流れ
骨の状態や選ぶインプラントによって細かい内容は変わってきますが、治療の大まかな流れは下記の通り。
②検査
③治療計画立案
④インプラント手術
⑤メインテナンス
以下、詳しく説明していきます。
①カウセリング
インプラントの検査の前に、患者さんが抱える問題や悩み、その解決法について医師が説明していきます。
インプラントだけではなく、それ以外の選択肢がないのかも一緒に探っていきます。
結果、インプラント以外が最適であれば、インプラント治療を行わないケースもあります。
大切なのは、歯科医師と患者でゴールの共有を行うことです。
②検査
インプラント治療を受ける際に最低限必要なことは、歯科用CTスキャンです。
歯科用CTスキャンでは、平面的なレントゲン写真と違い、顎の中にある血管や神経の位置を三次元的に把握することができます。
さらに、お口の模型を作成し、それをもとに噛み合わせの検査も行います。
それは、どんなに優秀なドライバーでも目隠しをしたままでは安全に車を運転することができないことと似ています。
事前にインプラントを埋める骨の中の血管や神経の位置を正確に知っておくことは、非常に大切なことなのです。
③治療計画立案
検査で得た情報をもとに治療計画を立案します。
インプラントを打つ骨の中の状態によっては、造骨(骨を足す手術)を併用するケースもありますし、歯周病や糖尿病などがある場合は、治療期間が長期間に渡る場合もあります。
歯科医師が立てた治療計画と説明に納得できたら、インプラント治療へと進んでいきます。
④インプラント手術
1回法と2回法で多少手順は変わってきますが、大まかな手術内容は同じです。
- 患部に麻酔をした後にメスで歯茎を切り、骨にドリルでガイドの穴を開ける
- 小さなドリルから少しずつ半径を大きいものに替え穴を広げる
- 穴を広げたらインプラント体を埋めて縫合
インプラントの本数にもよりますが、ほとんどは1時間前後で終わります。
術後に出る症状としては、痛みと腫れが多いですが、術後に出される痛み止めか抗生剤を飲めば大丈夫です。
また、傷を縫っているため、術後の出血は少量で済みます。
⑤メインテナンス
手術後、問題なく食事ができるようになっても、定期的にインプラントの状態をチェックする必要があります。
経過観察の他、必要があれば噛み合わせの調整を行います。
年に数回の歯石の除去やレントゲン審査を行うことで、インプラントをより長く使うことができます。
インプラント体自体には神経がないため、問題が起こったとしても自覚症状がありません。
そのため、定期的に歯科医院でチェックしてもらうことが大切です。
2-3.インプラントをする病院を選ぶ際に気をつけたい点
病院を選ぶ際に気をつけたい点は、①家から通える範囲で病院を選ぶこと ②手術経験の豊富な病院で行うこと です。
遠方の病院で手術をした場合、術後にトラブルがあった場合すぐに対応することができません。
インプラントは定期的なメインテナンスが必要となるため、治療後も通える範囲で病院を選ぶことが必要となります。
CMで有名だからという理由や、安いからという理由で遠くの病院を選ぶことは避けましょう。
また、年間の症例数が多い病院で行うことも大切です。
インプラントは歯科医師だけが行う手術ではありません。
オペ準備スタッフやアシスタント、途中で必要なものが出たときのための待機スタッフなど、複数のスタッフが関わります。
症例数が少ない病院だとスタッフ間の連携が取れていないため、手術のクオリティが下がってしまいます。
そのため、日常的にインプラントを行っている病院での治療が安心です。
ホームページに症例数が書いてある場合もありますが、相談の際に年間どれくらいの症例数があるのか聞いてみることをお勧めします。
2-4.事前の相談や受ける説明について
事前の相談や受ける説明は、あくまで一般的な内容に限られていると思ってください。※一般的な内容:インプラント治療とそれ以外の治療法、リスクや治療の流れなど。
具体的なリスクや詳しい治療内容は、
実際に歯科用CTスキャンなどを行わないとわかりません。
ただし、不安に思っていることや知りたいことに対して、その時点で分かるものに関しては医師もしっかりと答えることができるため、知りたいことがあれば聞いてみましょう。
3.インプラントを受けようか悩んでいる人に知ってほしいこと
3-1.インプラントを理解すると不安はなくなる
インプラントに対しての心配や不安は、わからないから発生するものです。
インプラントについて調べて、歯科医師に相談することで理解が深まり不安もなくなっていきます。
また、インプラント治療において起こるトラブルのほとんどは、事前の検査不足や適応症でない患者さんに対して無理にインプラントを行った場合に起こっています。
しっかりと検査をして行った場合、トラブルは起きません。
しかし、術後の痛みなど出たときに、
歯科医院の対応によっては不安になってしまうこともあるでしょう。
そのため、不安な気持ちに寄り添ってもらえるような医院を選ぶことをお勧めします。
3-2.インプラントは高額ではない
インプラントの金額は1本あたり平均で30~50万円と高額に思えるかもしれませんが、適正な価格です。
理由としては、国民健康保険の範囲ではないことと材料費に加えて、インプラントオペに関わる人件費が挙げられます。
通常の歯科治療は、保険診療で行うことができますが、インプラントは国が保険診療と認めていないことから税金による補助を受けられないため、金額全てを患者さんが負担することになります。
また、インプラントの手術は、インプラント担当医、アシスタント、外回りと最低でも3人体制で行います。
使用する機械に加えて、材料のインプラント体、その上につけるアバットメントや被せ物も全て患者さんごとにオーダーして作るため高額になります。
インプラント全体にかかるコストを考えると、30~50万円という値段は決して法外な金額ではありません。
まるで自分の歯と同じように噛める体験は、払った額以上の感動をもたらせてくれますよ。
まとめ
インプラントはブリッジや入れ歯に比べ、自分の歯を傷つけることなくしっかりと噛むことができるようになるオススメの治療法です。
失敗を避けるために、事前にインプラントメーカーのホームページを見て知識を得ておいたり、疑問点を書き出しておいたりすることが大切です。
病院を選ぶ際は、症例数が多くて手術に慣れていることと、家から通える距離かどうかを確認しておきましょう。
また、相談しやすい医師かどうかを確かめることも大切です。
疑問に思ったことを話せない医師に、手術を任せることは難しいと思います。
私も実際にインプラントを入れるまでは怖さがありましたが、相性の合う医師たちのおかげで手術もすぐに終わり、今は快適に生活ができていて、インプラント治療を受けてよかったと心から思っています。
毎日使う歯だからこそ、
しっかり噛めると生活が楽しくなります。
やるかどうかは別にして、気になった人は相談だけでもすると良いですよ。
[口臭や滑舌に変化はありましたか? ]
[手術中・術後にトラブルはありませんでしたか?]
その他は特にありません。
[手術を受けた医院を選んだ理由をおしえてください]
信頼できる専門医であるため、安心感がありました。
[メンテナンスや日々のお手入れについて]
また、メインテナンスはかかりつけ医にて3ヶ月に1回、レントゲンは年に1回撮影してもらっています。
[費用面についてインプラントを検討している人へ、アドバイスやご意見等]
[インプラント手術を受けるべきかどうか悩んでいる・不安を感じている人へのアドバイス]